衆生本来仏なり 水と氷のごとくにて
水を離れて氷なく 衆生の他に仏なし
小さい頃から念仏を唱えるたびに唱えた臨済宗では有名なお経のくだりです。
「白隠禅師坐禅和讃」と言います。
それまではあまり意味も考えることなく、お経を読んでいたのですが、ふと、ホームページを検索している中で、白隠禅師という人がこのお経を作ったということを知りました。しかも、白隠禅師はそれだけでなく、鎌倉時代に栄西によって日本にもたらされた臨済宗を江戸時代に日本バージョン’に編集(漢文表記を日本語に解説するなど)するとともに、その頃、特権的な地位を失っていた臨済宗の立て直しを行ったのです。
日本における臨済宗の今があるのは、白隠禅師の賜物と言っても過言ではないのです。
○白隠慧鶴(1686~1768)駿河国生。諡:神機独妙禅師、正宗国師。
新幹線で実家に帰る途中、本でも読んで帰るか~と思い、売店へ行くと「白隠禅師の不思議な世界」(ウェッジ新書)という本が売っていました。しかも、1冊だけ。あ。と思った瞬間、横の人がその本を手にとってしまい、心の中では「読みたい~。買うなよ~」と祈っていたら、お祈りが通じたのか買わずにどこかに行ってしまいました。
ということで、本を購入。早速、読んでみました。
基本は二部構成。
一部は白隠禅師の絵画と賛について。白隠禅師は文章だけでなく、絵もたくさん書いたとのことで、その絵画と「賛」といわれる絵画の中に書いてある文章から白隠禅師がその時、何を感じ、何を社会に訴えかけようとしていたのかということが書かれてあります。
二部はそれらを踏まえ、著者である吉澤勝弘さん(花園大学)、松井孝典さん(千葉工業大学)、合原一幸さん(東京大学)の鼎談となっています。
全体を通して、聖諦(聖なる世界)・俗諦(現実世界)の二項対立を超えて、物事を見ていくこと、そして、見るだけでなく実践をしていくことを白隠は常に考えていたということが理解できてとても良かったです。
「上求菩提、下化衆生」という言葉がありますが、これは、上に向かって悟りを求め、下に向かっては仏の道を説き迷える人を救うという意味です。白隠は、この実践を行い続けました。また、禅宗では有名な「四弘誓願文」がありますが、白隠は「菩提心とは是れ請願輪を出てざることを決定す」と言い、四弘誓願文を実践していくことこそが大事だと言っています。
・四弘誓願文
衆生無辺誓願度
煩悩無尽誓願断
法門無量誓願学
仏道無上誓願成
白隠の考え方は、今日のソーシャルワークに近く、職業柄としても、また、臨済宗仏教徒としても、もっと白隠について学んでいかなければいけないなと感じさせられました。